曹洞宗 蒼龍寺

曹洞宗 蒼龍寺 秋田市土崎港の曹洞宗寺院。
「港の子宝寺」として親しまれており、地域の皆様に寄り添う寺院でありたいと願っています。

また寺院運営のかたわら、趣味で創作活動も行っています。「仏教を書くのではない。仏教で、人間を書く。」
https://mypage.syosetu.com/3017674/

秋田市土崎港の曹洞宗寺院。
「港の子宝寺」として親しまれております。 地域の皆様に寄り添う寺院でありたいと願っています。

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」第7話:禁断の二十歩――深夜の潜入作戦と、絶望の光《前書き》運命の境界線まで、わずか二十歩。煩悩に負けた一人の修行僧が、決死の覚悟で「禁断の自販機」...
06/08/2026

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」

第7話:禁断の二十歩――深夜の潜入作戦と、絶望の光

《前書き》
運命の境界線まで、わずか二十歩。
煩悩に負けた一人の修行僧が、決死の覚悟で「禁断の自販機」に挑んだスリル満点の突撃編です。

《本文》
厨房の勝手口から、その自販機へ向かう道のり。永平寺と門前町の境界線まではわずか二十歩。

普通なら、スキップしても届くような距離です。しかし、その二十歩の間には、永平寺の厳しい「規律」という、目に見えない巨大な壁がそびえ立っていました。

許可なく敷地を出ることは、文字通りの「ご法度」です。
もし見つかれば、どのようなお叱りが待っているか分かりません。

「でも、どうしても飲みたい……!」

渇望が恐怖を上回り、私は一歩、また一歩と、抜き足差し足で自販機へ向かいました。

 十五歩、十六歩……。

静寂の中で、心臓の音が耳元で鳴り響くような緊張感。
そしてついに、二十歩目。永平寺の敷地と門前町の「境目」に足をかけた、その瞬間でした。

 ――ピカッ!!!

突然、深夜の静寂を切り裂いて、強烈な防犯ライトが私を真っ向から照らし出したのです。

 「ひえっ!」

心臓が止まるかと思いました。見つかった! とパニックになった私は、コーラのことなど一瞬で吹き飛び、転がるように厨房へと逃げ帰り。

結局、その日は自販機のボタンに触れることすらできず、冷や汗をかきながら大人しく小食の準備を始めることに……。

見えるのに届かない、近くて遠いコーラ。あの光に撃ち抜かれた瞬間の絶望感は、今でも忘れられません。

世の中には、越えてはいけない一線というものがある。
それを身をもって学んだ、春の苦い思い出でした。

合掌

《後書き》
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

あのライトが光った瞬間、「仏様に見つかった!」と本気で思いました(笑)。まさに一生忘れることのできない光。結局、あの日の私はコーラを一口も飲むことができませんでしたが、あの恐怖心こそが、規律を守るための最初の試練だったのかもしれません。

次回の話は私の人生で一番思い出に残った出来事をお話します。覚悟してお待ちください。

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」第6話:深夜二時半、闇の中に見た「神々しい光」《前書き》永平寺での最初の関門「地獄の旦過寮」を抜け、配属されたのは「小庫院(しょうくいん)」という台...
30/07/2026

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」

第6話:深夜二時半、闇の中に見た「神々しい光」

《前書き》
永平寺での最初の関門「地獄の旦過寮」を抜け、配属されたのは「小庫院(しょうくいん)」という台所。
不眠不休で働く私の前に、ある日、暗闇を切り裂く「神々しい光」が現れました。

《本文》
前回は、トイレで泣き崩れた情けないお話でしたが、今回は一転。修行生活の中で見つけた「希望の光」についてお話しします。

 上山して二ヶ月。私は「小庫院(しょうくいん)」という、参拝者(一般客)の方々の精進料理を作る部署に配属されていました。多い日は一日に四百人分の料理をわずか数人でこなす、お山でも一、二を争う過酷な現場です。
 朝は午前二時半に起床してお米を炊き、夜は二十一時半まで皿を洗う。まさに不眠不休のような毎日でした。

 そんなある日の早朝のこと。
 まだお山全体が深い眠りについている午前二時半、私は一人、炊飯のために厨房へ向かいました。ふと小庫院の食材搬入用勝手口に目をやると、そこから先はなんと!門前の町並みへと直接繋がっていたのです。食材を搬入する場所なのだから当たり前なのですが、外界と遮断されていた当時の私には、まるで異世界への扉に見えました。

 外は、吸い込まれるような真っ暗闇。
 しかし、その暗闇の先に、私は「見て」しまったのです。漆黒の闇の奥深くに、ぽっかりと浮かび上がる鮮やかな光。赤と青のライトを眩しいほどに輝かせている……あの「自動販売機」でした。

「あそこに……あそこに行けば、コーラがある」

 かつて同期が叫んで連帯責任を食らった、あの禁断の飲み物。
 月給三千円の私にとって、自販機のボタン一つはとてつもない贅沢です。しかしそれ以上に、その光は「修行僧」という身分を一時だけ脱ぎ捨て、俗世の空気を味わえる唯一の希望に見えたのです。

 飲み込む唾の音すら響き渡る、静まり返った境内。もし見つかれば、即座に厳しいお叱りが飛ぶのは目に見えています。
 それでも、二十四時間休まずにそこで待ってくれている自販機の灯火は、当時の私にはどんな仏様の後光よりも神々しく見えました。

 果たして、二十九歳の修行僧は、暗闇を突き進んで「赤いボタン」を押したのか。
 そのスリル満点の結末は……また次の回にお話ししますね。

合掌

《後書き》
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
修行中の身でありながら、自販機の灯りに心を奪われる……当時の自分がいかに極限状態だったかが分かります。でも、あの光は本当に綺麗だったんです。

次回は、自販機へと続く暗闇の潜入作戦。その結末と、そこで味わった「一生忘れられない〇〇」についてお話しします。

24/07/2026

【緊急】熊の目撃情報に伴う参拝お控えのお願い

​お檀家の皆様、地域の皆様へ
​先ほど地元の猟友会の方より、「蒼龍寺の敷地内に熊が入っていったとの目撃情報があった」との連絡があり、境内および周辺のパトロールを行っていただきました。
​今回のパトロールでは熊本体は発見されませんでしたが、ここ連日近隣地域を徘徊している個体と同体である可能性が非常に高い状況です。
​皆様の安全を最優先とするため、状況が落ち着くまでの間、急要のご用件以外での境内へのお参り・墓参りは、極力お控えいただきますようお願い申し上げます。
​近隣の皆様も、外出の際は十分にご注意ください。

​合掌
​ #蒼龍寺 #秋田市 #土崎 #緊急連絡 #熊目撃情報 #注意喚起 #地域の皆様へ

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」第5話:衝撃の衣資料――29歳の私が泣き崩れた夜《前書き》修行生活にも慣れ始めた頃、私は初めての「衣資料(お給料)」を手にしました。時給でも、日給で...
23/07/2026

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」

第5話:衝撃の衣資料――29歳の私が泣き崩れた夜

《前書き》
修行生活にも慣れ始めた頃、私は初めての「衣資料(お給料)」を手にしました。
時給でも、日給でもなく、一ヶ月の「月給」。
会社員時代とのあまりのギャップに泣き崩れた、人生で一番情けない夜の記録です。

《本文》
今回は、私の人生で最も「己の無力さ」を痛感した夜のお話です。

二十九歳の冬。私は今の自坊(じぼう)――"自分のお寺"へ婿として入り、出家得度(しゅっけとくど)をいたしました。
それからわずか数日の後。右も左も分からないまま、それまでの「普通」が一切通じない永平寺の門を叩いたのです。もちろん、薦められたとはいえ自分で選んだ覚悟の道。そこに迷いはありませんでした。

しかし、それまで俗世の荒波に揉まれて生きてきた私にとって、外界の音も情報も完全に遮断された生活は、想像以上に心を削っていきます。
張り詰めていた糸が、音を立てて切れたのは、上山(じょうざん)して一ヶ月が過ぎた頃のことです。

この日、修行生活の中で、初めての「衣資料(お給料)」をいただきました。
茶封筒を渡され、どこかで「とはいえ、最低限の手当くらいは……」という世間知らずな期待と不安を抱えながら中身を確認した瞬間、私は言葉を失います。

「三千円」
それが、私の一ヶ月の対価。

それまで会社員としてそれなりの収入を得ていた私にとって、三千円はあまりにも遠い世界の数字でした。二十四時間すべてを捧げ、心身を極限まで追い込んで得た報酬が、たったの三枚の千円札だったのです。

その文字を見た瞬間、足元から何かが崩れ落ちていく感覚に襲われました。
必死に積み上げてきたキャリアもプライドも、この「お山」では一円の価値も持たない――。自分は今、一体何者なのか。こんな不甲斐ない自分に、家族を幸せにすることなどできるのだろうか。

その夜、私はトイレの個室で、一人で声を殺して泣きました。鍵をかけ、冷たい床に膝をつき、暗闇に肩を震わせながら、情けないほどに涙をこぼしたのです。

あの日の三千円は、私のプライドを静かに壊しました。
そして、その壊れた破片の上から、私の修行は本当の意味で始まったのだと思います。

合掌

《後書き》
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
あの時、冷たいトイレの床で感じた「無力感」は、今でも昨日のことのように思い出せます。しかし、どん底まで落ちたからこそ、ようやく「一から修行する」という本当の意味が見えてきた気がします。

 次回は、あの禁断の果実を見つけてしまったお話し。私にとっては大事件の始まりです。

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永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」第4話:「べっす」を掃け!?――地獄の旦過寮を終えた後の大失態《前書き》ようやく地獄の旦過寮を抜け、一般修行僧である「新到」の仲間入りをしました。そ...
16/07/2026

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」

第4話:「べっす」を掃け!?――地獄の旦過寮を終えた後の大失態

《前書き》
ようやく地獄の旦過寮を抜け、一般修行僧である「新到」の仲間入りをしました。
そんな時、初めての大きな法要に随喜(参列)することになり、緊張がピークに達した私の耳に、古参和尚からの謎の指令が届きます。

《本文》
 前回お話しした、一週間に及ぶ地獄の「旦過寮(たんがりょう)」をようやく終え、私は「新到(しんとう)」と呼ばれる一年生として一般修行僧の仲間入りをしました。

 永平寺では、この時期になると新入りも一人前として扱われ、大きな法要への随喜(ずいき)――つまり正式な参列を許されるようになります。

 私にとっては、これが初めての「公式な大舞台」でした。

 一ミリのミスも許されない。そう自分に言い聞かせ、緊張で心臓の音が聞こえるほどガチガチになりながら準備を整えていると、先輩の和尚さんから鋭い声が飛びました。

「おい、早く『べっす』を履け!」

 べっす……?
 当時の私は、その言葉の意味をまだ知りませんでした。

(漢字では『襪子』と書きます。足袋に似ていますが先が分かれていない、お坊さん特有の靴下のような履物のことです)

 しかし、混乱していた私の耳が拾ったのは、履物ではありませんでした。

「えっ、ベッス? ……あ、どこか特定の『場所』の名前か!別室かなんかか?」

 そう勘違いした私は、何を血迷ったか、近くにあった「ほうき」を手に取りました。「べっす(という場所)を掃け!」と言われたのだと思い込み、必死に掃除を始めようとしたのです。

「……何してるんだ、お前?」

 ほうきを持ってウロウロする私を見て、先輩和尚はポカンとした後に大爆笑。

「掃除してどうする! 足に履くんだよ!」

 もう、顔から火が出るどころか、自分自身が線香の代わりになれるのではないかと思うほど真っ赤になりました。地獄の旦過寮を抜け、気合を入れて臨んだ初法要の直前に、ほうき一本で爆笑をさらってしまった、若き日の苦い思い出です。

合掌

《後書き》
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

さて、今日の話は、ようやく厳しい試練を一つ乗り越えたと思った矢先の出来事でした。「知らない」ということは、時に恐ろしい行動を引き起こすものですね(笑)。あの時、ほうきを握りしめたまま固まった私の姿は、今でも先輩方の語り草になっているとかいないとか。

 次回は、永平寺のさらなる現実。人生で最初で最後で最大の壁に泣き崩れたお話です。

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」第3話:旦過寮の地獄と、魂の「コーラ」《前書き》今回は、永平寺に入って最初の関門「旦過寮(たんがりょう)」でのお話です。外界の情報をすべて遮断された...
09/07/2026

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」

第3話:旦過寮の地獄と、魂の「コーラ」

《前書き》
今回は、永平寺に入って最初の関門「旦過寮(たんがりょう)」でのお話です。外界の情報をすべて遮断された極限状態で、ある若き修行僧が叫んだ「一言」が、地獄を招くことになりました。

《本文》
入社式を終え永平寺に入ると、最初は三十人ほどの同期と一緒に大部屋に押し込められます。そこは「旦過寮(たんがりょう)」と呼ばれる、新入りのための最初の試練の場です。
 そこで一週間、テレビもスマホも一切なし。ひたすら壁に向かって坐禅を組み、作法やお経を叩き込まれます。足のしびれが限界を超え、感覚すらなくなる……そんな静寂の日々が続きます。

 ところが、ある夜のこと。
 張り詰めた糸がプツンと切れたのでしょう。一人の同期が、突然叫んだのです。

「あー! もう嫌だ!! コーラ飲みてぇ!!!」

 全員が「……えっ!?」と固まりました。
 静まり返った「お山」で、最も不釣り合いな文明の単語が響き渡ったのです。慌てて隣の者が窘(たしな)めましたが、もう遅い。

 ガラッ! と襖が開いて、古参の和尚さんが仁王立ちしていました。
「連帯責任だ。全員起きろ。いいと言うまで正座してろ!」

 叫んだ本人は顔を真っ青にして、今にも泣き出しそうに私たちへ謝罪の視線を送ってきます。しかし、怒る気力すら湧かないほど、そこからの正座は過酷でした。
 永遠に続くかと思える時間……。あの時ほど、一人の身勝手さと、連帯責任という言葉の重み、そしてコーラの美味しさの思い出を噛みしめたことはありません。

 過酷な環境だからこそ見える、剥き出しの「人間の本音」。
 皆さんも、もし次にコーラを飲む時は、修行僧の「魂の叫び」をちょっと思い出してみてくださいね。

合掌

《後書き》
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
一人の失態が全員の責任になる「連帯責任」の厳しさは、当時の私たちには本当に辛いものでしたが、今となっては大切なチームワークの学びでもありました。

さて次回。旦過寮を終え、いよいよ正式な修行僧(新頭)となった私を待っていたのは――「お山」の歴史に残る(!?)あまりに恥ずかしい大失敗でした。

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」第2話:山門の「圧迫面接」と、正直すぎる仲間《前書き》今回は、私が永平寺の門を叩いた「修行初日」のお話です。今思い出しても足の感覚がなくなるような、...
02/07/2026

永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」

第2話:山門の「圧迫面接」と、正直すぎる仲間

《前書き》
今回は、私が永平寺の門を叩いた「修行初日」のお話です。今思い出しても足の感覚がなくなるような、雪の日の出来事でした。

《本文》
平成十八年三月四日。その年は後に「平成十八年豪雪」と呼ばれるほどの大雪で、永平寺も世間に違わず降り積もる深い雪に包まれていました。
 この日が、私の「上山(じょうざん)日」——つまり永平寺への入社初日でした。

 永平寺の門を叩くには、まず独特の儀式があります。門にある木版を三回打ち鳴らすと、中から古参の和尚さんが現れ、雷のような声で怒鳴るのです。

「貴様ら! 何しにここへ来た!!」

 そこからは、一人ずつの「問答」が始まります。

「修行がしたいです!」「家でやれ!」
「永平寺が好きです!」「好きだからどうした!」

 何を言っても一喝される、凄まじい緊張感です。そんな中、私の隣にいた仲間の答えが今でも忘れられません。

「坐禅がしたいです!」と答えた彼に、古参和尚さんが「お前はどこの大学だ?」と問いかけました。
「駒澤大学(仏教系の大学)です!」
「なら授業で坐禅はしただろう?」
 畳みかけられ明らかにテンパった彼が、雪の中で放った言葉は……。

「サボってやりませんでした!!」

 ……思わず耳を疑いました。そこは嘘でも「やりました」と言うところだろうに。
 あまりの正直さに、恐ろしい形相をしていた和尚さんも、笑いを堪えるのに必死な様子でボソリ「……正直なやつだな」と。隣にいた私も、吹き出したいのを必死に堪えながら、雪の中で震えていました。

 その後、古参和尚さんは奥へ引っ込み、私たちは門の外で二時間、雪に埋もれながら待たされます。
 極寒の中、じっと耐えながら「あいつ、あんなこと言っちゃって大丈夫かな……」と考えていたあの時間は、今思い出しても不思議な静寂に満ちていました。

合掌

《後書き》
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この時、隣で「サボりました!」と言い切った彼とは、その後過酷な修行を共にする大切な戦友となりました。

 次の話は上山早々、バキバキのボコボコに心をへし折られた、入社後すぐの魂の叫びをお贈りします。

【永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」】 第1話:お山の業界用語は「異世界」でした《前書き》今回から23週(毎週金曜日7時投稿)に渡って、私が20数年前に修行した——日本で一番厳しい修...
25/06/2026

【永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」】

第1話:お山の業界用語は「異世界」でした

《前書き》
今回から23週(毎週金曜日7時投稿)に渡って、私が20数年前に修行した——日本で一番厳しい修行道場と言われる「永平寺」での十五ヶ月間の体験を綴ってまいります。

タイトルに掲げた「ブラック企業」という言葉は、あくまで世俗の価値観に照らし合わせた比喩です。しかし、そこには現代の労働基準では測れない、人間の可能性を極限まで引き出す「真剣勝負の場」がありました。

私の別作品の禅を学べる『蒼龍くん物語』の根底に流れる哲学が、どのような過酷な現場で磨かれたのか。修行時代のリアルな裏側と合わせてお楽しみいただければ幸いです。

《本文》
今から20年以上前。私が二十代の頃、一歩踏み出した「職場」のお話です。
そこは、福井県の山奥にある曹洞宗大本山・永平寺。私たち坊さんの間では、親しみを込めて「お山(やま)」と呼ばれています。

静かな山寺を想像されるかもしれませんが、そこは七百数十年の規律が今も呼吸し続ける、日本一厳しいと言われる修行道場でした。門をくぐった私をまず待ち受けていたのは、聞いたこともない「業界用語」の嵐だったのです。

お山では、修行に入ることを「上山(じょうざん)」、無事に勤め上げた卒業を「乞暇(こうか)」や「送行(そうあん)」と言います。※他にも違う言い方があります。
一方で、厳しさに耐えかねて脱落してしまうことは、同じ山を下りるにしても「下山(あさん)」と呼んで、明確に区別されていました。同じ道を通って帰るのに、言葉ひとつで意味が正反対になってしまう。私は、この「下山」という二文字の重みに、何度も背筋が凍る思いをしました。

食事の呼び方も不思議なものでした。
朝食は「小食(しょうじき)」、昼食は「中食(ちゅうじき)」。そして夕食は「薬石(やくせき)」と言います。
夕食がなぜ「薬」なのか。かつて修行僧は正午以降の食事を禁じられていましたが、寒さや空腹で体を壊さないよう、空腹という「病」を治すための薬として最小限の食事をいただいた……そんな名残です。実際に温めた石を抱いて腹の虫をなだめていたという説もあり、当時の修行の厳しさが言葉の中に今も生きているのです。

週休0日、睡眠三時間、そして給料ならぬ手当は……。
世間の物差しで見れば、間違いなく「ブラック企業」そのものに見えるでしょう。
しかし、ここで誤解していただきたくないのは、これは決して「人格を否定する場」ではなかったということです。

むしろ逆でした。
徹底的に無駄を削ぎ落とし、我を捨て、一つの所作に命を吹き込む。その厳格な規律は、私という人間を根底から作り変えるために不可欠な、先人たちの智慧だったのです。

今もなお、私はあのお山を、世界で最も気高く、最も誠実な「職場」であったと心から敬意を抱いています。

これから少しずつ、あの激しくも温かい、十五ヶ月の記録を綴っていこうと思います。

合掌

《後書き》
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

右も左も分からない、正に異世界のような永平寺へ上山することになった私は、いったいこれからどうなってしまうのでしょう。

次回は、修行初日。門の前で数時間も立ち尽くした、あまりに過酷な「入社式」のお話をお届けします。

【金曜日から新連載スタート!】みなさま、こんにちは😊先週までお届けしていた「蒼龍くん物語第一部」と「玄龍物語」への温かい応援、本当にありがとうございました。龍たちの旅は少しだけお休みをいただきますが、次の【金曜日】からは、ガラリと雰囲気を変...
22/06/2026

【金曜日から新連載スタート!】
みなさま、こんにちは😊

先週までお届けしていた「蒼龍くん物語第一部」と「玄龍物語」への温かい応援、本当にありがとうございました。

龍たちの旅は少しだけお休みをいただきますが、次の【金曜日】からは、ガラリと雰囲気を変えた新しい週一連載を始めます!

タイトルは、
『永平寺はブラック企業!? ――月給3000円、不眠不休の厨房で学んだ「完璧じゃなくてもいい」』

今から20数年前、私が29歳のときに大本山永平寺へ上山した際の実体験を、壮絶だったけど、ちょっと可笑しい修行の思い出として綴るエッセイです。

◇◇◇

「週休0日、睡眠3時間、給料3000円」
福井の山奥、そこは日本一過酷な「ブラック企業」と揶揄される――曹洞宗大本山・永平寺でした。

二十代の私が門を叩いたのは、七百年変わらぬ規律が支配する修行道場。
「貴様!! 何しにきた!!!」

時を知らせるのは鐘の音、娑婆と隔絶された世界で己の未熟な傲慢さを叩き壊され、只ひたすらに自分の心と向き合った十五ヶ月間。
これは、元新米僧侶が「お山」という名の究極の職場で経験した、容赦なく厳しく、ちょっとオフレコな記録です。

◇◇◇

間違いなく今の私の土台を作った人生最高の経験。その修行のリアルな裏側をお届けします。現代のストレス社会を生きるみなさんの心が、少しでも軽くなったり、「クスッ」と笑えたりする時間になれば幸いです。

それでは金曜日朝7時の第1話、どうぞお楽しみに!

合掌

#蒼龍寺 #新連載 #永平寺 #修行記 #ブラック企業 #秋田市 #土崎 #エッセイ #ノンフィクション #お山

玄龍物語 【後書き】十龍図の成り立ちと願い全十話にわたる『十龍図』、最後までお付き合いいただき心より感謝申し上げます。いかがでしたでしょうか。もしよろしければ、皆さまが一番心に残った場面などを感想で教えていただけると、これ以上の喜びはありま...
15/06/2026

玄龍物語 【後書き】十龍図の成り立ちと願い

全十話にわたる『十龍図』、最後までお付き合いいただき心より感謝申し上げます。いかがでしたでしょうか。
もしよろしければ、皆さまが一番心に残った場面などを感想で教えていただけると、これ以上の喜びはありません。

さて、完結にあたり、この物語の根底にある禅の教えと、私がこの物語に込めた想いを少しだけ綴らせていただきます。

1. 十牛図(じゅうぎゅうず)とは
十牛図は、悟りに至るまでの道筋を十枚の絵と詩で描いた、禅の入門書とも言える教えです。
そこでは「牛」は人間の真実の自己(仏性)を、そして「牛を追う男」は修行者(自分自身)を象徴しています。

尋牛(じんぎゅう): 自分の本当の姿を探し始める
見跡(けんせき): 足跡を見つける
見牛(けんぎゅう): 牛の姿を捉える
得牛(とくぎゅう): 牛を捕まえる(まだ暴れる)
牧牛(ぼくぎゅう): 牛を飼い慣らす
騎牛帰家(きぎゅうきか): 牛と一体になり家に帰る
忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん): 牛を忘れ、ただ自分が座る
人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう): 自分も牛も、すべてが空になる
返本還源(へんぽんかんげん): あるがままの自然の姿に戻る
入鄽垂手(にってんすいしゅ): 街へ戻り、人々を助け導く

2. なぜ「龍」へと再構築したのか
本連載『十龍図』では、禅の抽象的な教えを現代の私たちが直感的に理解できるよう、また『蒼龍くん物語』の世界観を補完するために、以下のような意図を込めました。

力の象徴としての「龍」
十牛図の「牛」は本来、穏やかな本性の象徴です。しかし私たちの心には、もっと荒々しく、制御しがたい「力への欲求」や「野心」が潜んでいる。それを「黄金の龍」として描き、修行を通じてその角を研ぎ、鱗を磨き、最後には白き慈悲へと変容するプロセスを強調しました。

「自己完結」から「他者への誠実さ」へ
禅の悟りは個人の内面で完結しがちですが、本作では親友・黒龍との別離という「対人関係の悲劇」を軸に据えました。どれほど自分が悟りに近づいても、間に合わない現実がある。その絶望をどう乗り越え、次世代(蒼龍くん)への教育に繋げるか。そんな思いを込めました。

3. 最後に
玄龍が歩んだ「日々進むべき道」は、決して特別なものではありません。
ただ、目の前の命に誠実であること。その積み重ねが、いつか自分自身の「安住の地」を形づくるのだと信じています。

こうして物語はここで完結となりますが、蒼龍くんと玄龍さまの「日々是好日」な日常は続いていきます。
蒼龍くんの成長と、かつての親友・黒龍との因縁が交錯する本編も、あらためてお楽しみいただければ幸いです。

【癒やし】蒼龍くん物語 〜小さな龍と学ぶ、心を調えるための「禅の智慧」〜
https://ncode.syosetu.com/n7536lr/

合掌 蒼龍堅明

住所

秋田県秋田市土崎港中央1-19/12
Akita-shi, Akita
011-0946

営業時間

月曜日 06:00 - 17:00
火曜日 06:00 - 17:00
水曜日 06:00 - 17:00
木曜日 06:00 - 17:00
金曜日 06:00 - 17:00
土曜日 07:00 - 17:00
日曜日 06:00 - 17:00

電話番号

+81188450639

アラート

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